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姿勢

スタイルの良し悪しや体型のことは話題に上りやすいですが、足の角度について話されることはほとんどありません。ですが、足の角度がたった1度変われば、体軸の位置は変わってしまい、猫背や出っ腹、ガニ股など自分のシルエットへと跳ね返ってきます。

シルエット
足と姿勢
ハイヒールと外反母趾
姿勢を正すには
足と姿勢
ハイヒールと外反母趾
姿勢を正すには

足と姿勢

足は体の根元側に位置しています。つまり、足関節や足部の角度が少し変わるだけで上に乗っている他の部位は大きく傾くことになります。角度が変わっても倒れないようにするために、人は頭の位置を前後に動かしたり、骨盤の角度を変えたりなどして、バランスを整えようとします。これが猫背や肩こり、腰痛、歯列の乱れなどの遠因になりえるのです。
加えて左右の足の長さの差によってもかなり軸のバランスが変化して、全身に影響を与えます。足部の影響はどんなに小さく見えても、体の上に行けば行くほど大きくなってしまいます。
足の角度の変化はさまざまなパターンがありますが、ここでは主に足のアライメントであるトーイン・トーアウトの観点で姿勢との関係を説明していきます。
強いトーアウトをしている場合は、扁平足の合併率が高いですし、膝や股関節のポジションが曲がった状態で立ちやすくなります。骨盤も前傾しやすく、背骨が反る形になる運動連鎖になっています。
自然に立った際につま先が内側を向くトーインの場合、膝は過伸展(バックニー)になり、骨盤が前傾してしまい、背骨が反る形になる運動連鎖になります。
いずれも背筋が悪くなる一因なだけでなく、骨盤の前傾によりお腹が前に突き出た状態になり、見た目も悪くなります。
足の長さの違いを膝の位置から知ることができます。
腿側が長い場合は、片膝が前に出ます。脛側が長い場合には手前に高くなります。大きく差がある人は少ないですが、目安として知っておくと良いでしょう。
アリステスト
膝の変形がないのにX脚やO脚に見えるという場合は、足元の扁平足や凹足が原因になっている場合がほとんどです。地面への接地角によって見た目の上で損をしてしまいますし、そのまま放置すれば変形性の膝関節症などにもつながります。

ハイヒールと外反母趾

シルエットを整える中で靴の存在は欠かせませんが、大きな誤解を生んでいるのがハイヒールと外反母趾の関係です。「ハイヒールをよく履くと外反母趾になる」という神話がネットを中心に広がっていますが、大きな間違いです。むしろ外反母趾の人や開張足の方がハイヒールを履くことで親指付け根などが当たって痛みが出ているケースや、ハイヒールを脱いだ後のケアが不十分なために結果として足を歪めてしまうのです。
ハイヒールと外反母趾
外反母趾は足の構造からくる進行性の疾患で、足が回内することが一因です。ハイヒールを履くと、足は動きが制限されるので、むしろ外反母趾の進行を止める可能性があります。
一方で、ヒールを履き続けるのは常に爪先立ちを続けているのと同じ動きになります。すると、アキレス腱が固くなり、引きずられる形で足首も固くなってアンクルロッカーがうまく稼働しなくなるのです。そうなってしまうと踵や前足部の負荷が高まるため、ハイヒールを脱いだときに、踵に痛みをもたらしたり、足に変形をもたらして外反母趾を進めることになってしまいます。
爪先立ちには全身のバランスを崩す弊害もあります。実際にやってみるとわかりますが、爪先立ちは、足首の関節がゆるくなるため、非常にバランスを崩しやすい姿勢で、バランスを取るために、膝を完全に伸ばしてしまう過伸展になるか、膝を曲げ続ける姿勢になります。
過伸展の場合には、重心が前に行くため骨盤が前傾しやすく、背中が反るような姿勢になりがちです。膝が曲がっている場合は、後ろに重心が行くため、猫背になりやすくなります。
ハイヒールを履きたい方は、これらの特性を理解し、より足の形や骨格の歪みに気をつけることが大切になります。

姿勢を正すには

では姿勢を整えるにはどうしたらいいのでしょうか。
足の角度を決めるのは、26個の骨の位置関係となります。正常なアライメントを保つには足部に関連する筋肉の役割が重要で、鍛えたり、緊張を緩めることが大切です。一般的には、軽い運動を行うほか、インソール型矯正装具によって、正しい角度を維持することで整えられます。
運動面で言うと、効果的な手法としてストレッチが挙げられます。ストレッチによって関節や筋肉の伸長性を変化させ、緊張を緩和することで、正常なポジションに戻りやすくすることは可能です。また、ボディメイクで行うような強度の高い筋力トレーニングを用いて整えることもできます。ただし、姿勢を変えるほどの筋力トレーニングとなると、かなりハードなものになってしまうため、なかなか継続的に行えない可能性があります。
運動とインソール
そこで、運動と併用していきたいのがインソール型矯正装具です。インソールと聞くと靴屋に吊るされている薄い板を想像する方も多いかもしれません。インソール型矯正装具はそれとは異なり、個人の足の形、姿勢に合わせてオーダーメイドで作成される医療機器です。足内側縦アーチを中心に支え、骨の位置を正しい形に持っていくため、履くだけでも姿勢改善効果や体軸を正しい位置に導く効果が期待できます。
加えて、インソール型矯正装具を履きながら運動を行うことで、正しい位置で筋力をつけられます。アメリカを中心とする足病医学が進んでいる国では、相乗効果を狙ってインソール型矯正装具+運動という取り合わせがゴールデンスタンダードとなっています。

医師監修:村井峻悟 先生 李家中豪 先生
理学療法士監修:河辺信秀 先生

足と歩行の診療所 荻窪院・蒲田院グローバルポダイアトリーパートナークリニック