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足の位置

レオナルド・ダ・ヴィンチ曰く「足は人間工学上、最大の傑作であり、最高の芸術作品である」。
人類だけが二足歩行を遂げたことで足は他に例を見ないほど複雑で、素晴らしい機能を持った器官となりました。この機能を如何に整え、保ち続けるのかが全身の健康も左右します。

ポジション
足の構造
歩きのメカニズム
扁平足と凹足
靴の重要性
足の構造
歩きのメカニズム
扁平足と凹足
靴の重要性

足の構造

まずは足をバイオメカニクス的に見ていきましょう。
足にある踵の骨は、本来体重がかかる中心よりも外側に位置します。そのため、立位や歩行では足の内側に崩れてしまいやすいという特徴があります。加えて、踵が外側で支えているため、内側縦アーチは宙に浮いている構造になっており、筋肉や靭帯など何か別のもので支えないと床へ落ちてしまいます。つまり、内側縦アーチに存在する靭帯や足底筋膜(足裏の筋膜)の機能やアーチを保持する筋の機能が低下してくると、内側への倒れ込みに負けてしまい、自然と扁平足になってしまうのです。
足の構造
足の骨は7個の足根骨と5つの中足骨、14個の趾骨、計26個の骨で構成されており、全身の骨の約10%を占めています。これらの骨が、組み合わさることで、足の内側縦アーチ、外側縦アーチ、横アーチの3つのアーチを形成します。これらが、全身の体重を支えていくのですが、足は全身の体積に対してわずか3%しかありません。そのため、歩行という複雑な動きをする中で、より足部の運動障害が起きやすくなります。特にアーチ保持機能や踏み返しの機能が低下すると、足部の運動障害が起きる可能性があります。

歩きのメカニズム

本来足に何も問題がなければ、足はテコの原理を応用して進んでいきます。これをロッカーファンクションといいます。
基本的には踵、足関節、指付け根の関節(MP関節)の3箇所が軸となって回転し、重心を前に移動させて歩行の動きを形成します。それぞれの軸は、下記の通りの動きになります。
ロッカーファンクション
ヒールロッカー:まず地面に接地する踵部分の軸。踵の骨は後方が丸く、回転構造になっている。
アンクルロッカー:足首の関節の軸。足裏全体を支点に、テコの原理を使って回転し、重心を前に持っていく。
フォアフットロッカー:足指の付け根、特に親指の関節(MP関節)を支点に回転運動を使って踵を地面から離して上げる。加えて蹴り出す動きも作って前に進めていく。
これらのどこか1箇所でも悪くなると、歩きのメカニズムは破綻します。例えば、アンクルロッカーはアキレス腱が固くなると脛を十分に前に傾けられないので歩きづらくなります。フォアフットロッカーなら、親指の動きが悪くなると踵がうまく上がらず、別の筋肉を使って上げることになり、全身のバランスを崩す一因になります。そして、その崩れが体軸を乱し、歩行障害を招くことになります。
歩きにくさなどを感じるようでしたら、足のどこかに問題があると考えて、早めに対処しましょう。

扁平足と凹足

バランスが崩れることで生まれる足の変形の代表といえば、扁平足と凹足です。
扁平足と凹足
多くの場合、扁平足は踵部が内側に倒れすぎる(回内)ことで内側縦アーチが減少してしまう状態です。逆に凹足は踵部が外側に倒れすぎる(回外)ことで内側縦アーチが増強してしまう状態を指します。
しかし、一見扁平足や凹足に見えても、実際にそうなのかは専門家に判断してもらわないとわかりません。「ずっと扁平足と言われていた」という人の足が過度の凹足であるような事例は枚挙に暇がありません。またアーチが高いのに回内している場合など様々なケースがあります。足の形に違和感があったり、足に痛みや不具合を感じたりするならば、一度専門家に判断してもらうようにしましょう。
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扁平足と凹足になるとどのような問題が発生するのかを運動機能から考えていきましょう。
扁平足のようなアーチの低い足部は、骨の連結が緩い状態と言えます。こうなると、踵より前の部分で体重を支える機能が失われてしまい、体重を前にかけて歩くことができなくなります。また、扁平足は足裏が伸び切った状態で接地するため、衝撃吸収能力を失ってしまいます。これらは、足底の筋膜や靭帯を痛めたり、骨同士の異常なぶつかり合いから痛みが生じたりします。
凹足のようなアーチの高い足部は、関節間が密集しているので、非常に固い足になってしまいます。本来アーチが持っている衝撃吸収機能が失われてしまいますので、踵や前足部にかかる床反力(足裏と床との間に生じる力)が上がってしまうのです。
どちらの足も衝撃吸収機能は失われていますが、その失われ方が異なる結果、足に現れる痛みなどの症状も変わってきます。
変形は、生まれる前の子宮内での肢位異常や遺伝などの影響で先天的になる場合もありますが、筋力不足や左右の偏りなど足部の筋腱の不均衡によっても出やすくなります。
また、これらを放置し続けることでマメ・たこ・魚の目・巻き爪や他の重大な疾患に繋がる可能性が出てきます。
マメ・たこなどを病気だと認識している方は稀かもしれませんが、これは足に異常で局所的な圧力がかかることで生じる病気です。削ったりしてもすぐに元に戻ってしまいますので、正しい方法で除圧などの治療をする必要があります。足に異常を感じている場合は、早めに専門家にかかるようにしましょう。

靴の重要性

基本的な動作であっても変形しやすいのが足です。これを守るために発明されたのが「靴」になります。特に近年では、歩く場所が土や草原などから固いアスファルトに変わったこともあり、重要性は増しています。
ただ、一人ひとり足の形は異なりますので、誰にとっても良いという靴は存在しません。自分自身に合う靴を、自分自身で選ぶことが大切になります。
大事なのは次の6つの項目です。
①足のむくみなどの変化に対応できるような紐・ベルトなどの調整機能があること
②アッパーや踵部分に強度があって、履き口部が低すぎないこと
③地面からの衝撃を考えて、やや硬めで厚みのあるソールであること
④踵のソールが横から見て少し丸みをもっていること
⑤踵のソールが自分の踵よりも細くならないこと
⑥中敷が外せること

靴のサイズの選び方として最適なのは、中敷を外し、その上に踵を合わせて足をおき、つま先側に1〜1.5cm(子供の場合は0.5〜1cm)ほど余裕があるかどうかを見てみてください。つま先に余裕があっても親指や小指がインソールから出てしまうならば、歩行中に当たって痛みを作る原因になります。その場合には左右幅(ワイズ)が広いものに変えるか、つま先の形が足圧迫していないか確認してみてください。
靴底の柔らかさにも注意が必要です。手で左右から力を加えたり、履いて爪先立ちした際に真ん中から簡単に折れてしまうほど柔らかいタイプの靴は、足に合わせて曲がってしまうので扁平足を進行させる可能性があります。これは試合用のランニングシューズなどに多い傾向があります。しっかりと親指付け根の関節部分で曲がるものを選ぶようにしましょう。
また、正しい靴の履き方も意識してみましょう。基本的には踵を合わせて、つま先側から順に締めていきましょう。最後にやや内側を強く引くことで土踏まずを上げる効果も期待できます。
正しい靴の履き方

医師監修:村井峻悟 先生 李家中豪 先生
理学療法士監修:河辺信秀 先生

足と歩行の診療所 荻窪院・蒲田院グローバルポダイアトリーパートナークリニック