03.

成長

健康な人は生まれてから死ぬまでずっと自分の足を頼りに歩くことになります。言うなれば体の基礎を作る部分。この基礎は生活習慣の変化などによって容易に崩れてしまいます。
なかでも乱れやすい4つの時期についてご紹介しましょう。

グロース
子供の足
産前産後の
バイオメカニクスケア
壮年期の足
老年期の足
子供の足
産前産後の
バイオメカニクスケア
壮年期の足
老年期の足

子供の足

足と姿勢を綺麗に保つために最も重要なのは、小さい頃から調整をして正しい形・軸を作ることです。
子供時期は成長に合わせて体重が増えていくため、足への負担が増えて骨や軸が歪みやすくなる時期でもあります。骨も骨端軟骨が多いため、ちょっとした力がかかることで変化してしまうケースもあります。
また骨は、子供の頃からそのまま大きくなっていくわけではありません。骨の端にある骨端線(成長線)と呼ばれる骨端軟骨の部分が骨に置き換わっていくことで大きくなっていきます。骨の数も増えてくるので早めに矯正を始めることが大切になります。
子供の足
足病医学が根付いている欧米では、しっかりと歩けるようになる5歳までにインソール型矯正装具の装着を始めます。歩きに必要なアーチをしっかりと形成できるよう矯正できるほか、必要な筋肉や柔軟性をつけつつ骨の変形を防ぐことができるのです。扁平足や開張足、外反母趾などの予防にもつながるため、早い年齢から取り入れられています。
もし5歳を過ぎていても、骨端線が閉じる、すなわち大人と同じレベルに達して骨の成長が止まる15〜16歳頃までに始められれば、体のバランスを整えたり、軸を綺麗に作ることができます。
インソール型矯正装具の使用に加えて、靴の選び方も大人に比べより重要になります。
成長が早いからと大きめの靴を履かせてしまったり、小さい靴を長く履かせ続けてしまったりすると足の変形につながります。
大人の靴の選び方と同様ですが、前方の余地(捨て寸)は5〜7mm程度確保して指先が動くようにしましょう。紐を毎回締めたり、踵をトントンと合わせる動作などを教えておくと成長してからもしっかり履けるようになります。
両親にすでに足の変形があるようでしたら、子供にも同様の変形が起きやすい可能性があります。早めにインソール矯正装具や運動などを活用するようにしましょう。子供の靴を選ぶときには、足の機能を担保するための選択を心がけるといいでしょう。

産前産後のバイオメカニクスケア

女性にとって大きくライフスタイルの変わる産前産後に重要視されている足の問題は2つあります。
転倒予防と腹直筋離開の予防・治療です。
妊娠中はお腹の赤ちゃんが成長するにつれて、腹部前方への4〜6kgの荷重になり、軸のバランスが崩れてしまいます。そのバランスを整えるためにインソール型矯正装具の使用を行うことで、転倒予防につながることがわかっています。
産前産後の姿勢の変化
もう一つは腹直筋離開(欧米人に多く東アジア人には少ないとされています)のケアや予防です。腹筋は左右に分かれており、それを白線という繊維が体の中心でつないでいます。離開が起こると、白線が横に伸びてしまい、お腹が中心から割れたような状態になってしまいます。結果腰椎が前湾してお腹に力が入らず、姿勢が悪くなったり体幹が不安定になったりするほか、腰痛や歩きづらさにつながるなど日常生活にも不具合をもたらす可能性があります。これらの解決にはインソールによる姿勢の矯正と骨盤ベルトなどの補助が効果的です。
腹直筋離開は妊娠後期から産後しばらくの間までの女性に見られることが多いものでしたが、近年は妊娠経験のない方や妊娠からかなり時間が経った方などにも見られるようになっています。痛みなどを感じた場合は、専門家に相談すると良いでしょう。
2回以上出産を経験されている方は静脈瘤や足のむくみもリスク因子となります。むくみは運動で解消できるほか、インソール型矯正装具で足に適度な圧迫刺激を入れることで解決できる可能性があります。

壮年期の足

壮年期は足が完成された状態ですが、仕事環境や生活習慣によって足の変形を招く可能性があります。
仕事内容によっては自分の足に合わなかったり、足にとって悪環境の靴を履いて働かなければならない方も多いかもしれません。今は問題がないからと見過ごさず、しっかりとした足の知識とケア方法を学ぶことがこの時期に最も大事なことになります。
例えば職場で靴が指定されている場合などは、通勤中は自分に適した靴とインソールに履き替えることで足の変形を防ぐことができます。足の変化に敏感に気がついてあげることも必要です。仕事が忙しすぎて病院に行かず、気がついた頃にはひどい状態になってしまうということがないように、足の変化に注意しましょう。
壮年期の足
例えばマメやたこ、巻き爪は靴が自分に合っておらず、過度の圧迫や擦れによって生じる足の病気です。角度の変化によっては捻挫をしやすくなるなどのリスクも増えます。放置することで外反母趾や扁平足、開張足など他の疾患につながっていきますので、早めに対処するようにしましょう。
靴を変える、インソールを入れる、周辺をマッサージするなど、根本的な解決を図ることが大切です。

老年期の足

老年期で気をつけなくてはならないのが、歩行能力の低下です。
老年期を迎えると足部の変形は増えるほか、変形性膝関節症などに代表される下肢関節痛が出始めます。こういった痛みが出ることで歩行の能力が制限されると、老年期フレイルやロコモ、サルコペニアといった心身の衰えや筋力低下が進行することになります。実際に、治療にあたる現場では、ロコモを疑われる患者にはアーチが見られない扁平足・開張足が見られるケースが多いそうです。
足部の痛みから歩かなくなるから、歩けなくなるへ。歩けないことで筋力がさらに低下し、足部や膝の変形が進む。より強い痛みが出てきて歩けず、筋力が落ちる。このような悪循環に陥ります。
また、歩かないことは認知症のリスクや骨粗鬆症のリスクを高めることもわかってきています。
(参照:健康長寿研究所『中之条研究』)
歩行能力低下の最大の予防が「歩くこと」になります。
まずは歩くための正しい姿勢をチェックすることから始め、軸を整えるインソール型矯正装具や、体力をつけるための簡単な運動、ストレッチ、筋力トレーニングを取り入れて、快適に歩ける環境を整えていきましょう。

医師監修:村井峻悟 先生 李家中豪 先生
理学療法士監修:河辺信秀 先生

足と歩行の診療所 荻窪院・蒲田院グローバルポダイアトリーパートナークリニック